えっ! (中略)ですよ。続き

前回記事を読むとまるで
私が老齢の方の親切をただ迷惑と感じる若者のようだが、そうではない。
問題となるのは婆さまが連れてきた新人男性Bに「手伝ってもらう」か「断る」かだ。
婆さまのドヤ顔を横目に手伝ってもらうと前回記事のようになる。では、もう一方の「いや、間に合ってます」と
手伝いを断った場合はどうなるか。これもちと面倒なことになるのである。
なぜかといえば、この婆さまの気分を損ねると私の立場があやういのだ。
女性が大半を占める清掃バイトのなかでも特に発言力があるので
遠まわしにでも誰かを非難すると他のバイトにそれが波及する。
つまりは、どちらの選択をしてもハズレなのだ。
ハズレなら僅かでもはまともなほうを選んだまでのこと。
とにかく、私は時間通りに作業を終了させた。
肩の荷がおりてほっとする。だが、お次は精神的な攻撃が待っていた。
手を洗おうと洗い場に入ると先客がいた。子持ちの若い女性が二人。
聞くつまりは無かったが会話が聞こえてきた。ありがちな陰口。
それも私のだった。聞いてないふりをしつつ二人の横に立ち、蛇口を
ひねり手を洗う。もちろんそれとなく横目で観察する。
横に並ぶと二人はすこし固まったがすぐに主体的に話をしていた
デブがつづき―私の悪口―をする。どうやら、気づかれていないと思っているらしい。
それにしても陰口を聞かれたかどうかを瞬時に判断し
固有名詞をださずに途切れた会話をつなぐ技術は感嘆ものだ。
女性は陰口をしやすいとは言わないがこのデブは慣れている。
だからと言って人の陰口をし、またそれを注意することもなく
安易な同調をする者も許されるものではない。
不利な条件下でのノルマを達成し一息ついても
己の陰口を聞くはめになるとは。
しかし最後にはあの婆さまが待ち受けていた。
陰口をスルーして掃除用具室前で待機する。
タイムカードを押しにいくのには全員が揃ってからではない
といけないからだ。
気がつく。掃除用具室内の照明がONのまま。
OFFにして照明を消したとたんに「まだいるよ」としゃがれた声。
あの婆さまだ。話を聞くとまだ戻ってこないおばさんがいるとのこと。
「知ってるのならサポートに向かってやれよ」と言いたかったが抑える。
通路の奥にそのおばさんが見えたからだ。
モップを手にこちらに向かって歩いてきている。
このあとの行動は用具室に入りモップを搾りしまうだけだろう。
用具室の照明は消してしまったが店の照明がついているので
モップを搾りしまう行動に障りはない。だからこそ消した照明を
つけずにもどらなかった。
すると突然あの婆さまが
「だからまだいるんだって」と私に言いながら掃除用具室内の照明をつけた。
それも表情・所作・声量を巧みにあやつり
「やれやれ、気が利かない男だなぁ」といった風に。
なんだこれは。
うまく言い表せないが雰囲気が私が空気を読めない人間にさせようとしていた。
私の陰口を叩いて嬉し涙を流していた二人組みもやれやれ感をかもし出している。
はぁ?なんですか?私がわるものですぁ?と叫びたかった。
私はいつも作業が遅滞している人がいれば必ず手伝うが
私いがいはそうではない。余計な仕事はしたくないのだろう。
照明をつかなかっただけで悪者扱いにされているのを
論理的には反論できた。けれど、あの婆さまの若者はこれだから
仕方がないねぇといった諭すような空気を醸し出していのだから
できない。このような展開では正論であれ反論すること事態が
逆効果になるのだ。
作業を遅滞させる原因をつくった「ありがた迷惑」のみならず
ここでも私を追い詰めるか。この婆さまただものではない。
なにせ団塊の世代。老獪な手段により反論は封じられた。
なぜか気が利かない坊やにされ、苛立った私はその日、自主的につづけてきた
待機室の清掃をせずに一番に帰った。
待機室とは名のとおり待機をする場所でもあり、喫煙所・ロッカー
代わりにも使用されている部屋だ。私も含めて清掃バイトは誰もが
使っている。帰り際に必ず訪れる部屋である。
だからすぐに汚くなる。
荷物をとりに部屋にはいると夕方勤務の店員が落としたであろう
タバコの灰・お菓子の空き袋・パンフレットがテーブルの上に
散乱しているのが常だ。
これではいかん、と帰るときにはすこし清掃をしてきた。
しなくてもよい仕事なのだが、ごみを捨て・布巾をかけ
椅子の整頓だけである。1分ほどですむので毎回自主的にしていた。
結果、退出するのはいつも私が最後になる。
私の陰口をしていた前述の子持ちデブ女に観られたときは
「無駄なことするなぁ」と意味が分からないというような
顔で小言をいわれた。隣にはこれまた前述の陰口に同調し
いさめる事ができなかった子持ち女がいたのを覚えている。
いつも二人組みだから思い出すまでもないが。
結局のところ人一倍働いたのにいらぬおせっかいを
押し売りをされ一方的にドヤ顔をされ、陰口を叩かれ
最後には空気が読めない男認定にされた踏んだり蹴ったりな日であった。
この不調の前触れはあることにはあったのだ。
二日前から姉がやる気がないと称して仕事を休み続けていたからだ。
家事はしないが食料は食う。気分がわるくなると人に当たる暴君が
日がな一日居座っている状況から察して呪い除けをするべきだった。
方法なんて知らないし、知ろうとは思わないが。