肉はたべたらシヌと聞かされて。

私の父は放蕩人であった。それも世がバブルに沸いている時代に。
まだまだ好景気の上り坂。そんな時代に二十代をすごした父は
稼いだ金を賭博・酒に湯水のごとくつかう人間であった。
二児の親であるのに家庭には一切いれない。
だからこそ月2万円以下の家賃ですら払えない貧乏家庭で私は育った。
どんなモノを食べていたか今となっては知る手立てがないが
幼稚園入園の記憶を元に推測すればろくなものを食べていないと判断できる。
それは、入園時に園内広場で保育士のお姉さんに
「○○くんは食べ物でなにが好きなの?」と聞かれた記憶。
幼稚園入園時の事。
「○○くんは食べ物でなにが好きなの?」
ちかくに鉄棒があって入園に浮かれていたのか遊んでいる園児がいる
なか受けた質問だ。他の園児にも聞いていたのでお約束の質問なのだろう。
私は答えたのは「納豆」である。はっきりと思い出せる。ほかに食べ物を
知らなかったからだ。当時の私は離乳食を食べたことなどすっかり忘れていたし
「お米」と答えたらなにか怒られるという気分も持っていた。けれど他に
食べ物の知識がない。本当になかったのでお米以外に食べた納豆と答える
しかなかったのである。もちろん大人であり保育士のお姉さんは納得しない。
何回もしつこく聞いてきたが私は納豆と答えることしかできなかった。
なぜか優しく微笑んで、微妙な顔をして離れていった保育士さんの気持ちが
いまでは理解できる。あの笑みは少々の憐れみもふくんだ笑みだったのだ。
しかし、まだ良かったほうではある。もし、これが「子供ならこう答えるべき」との
考えをもつ大人であったのならバナナ・ケーキ・ハンバーグなどの単語がでるまで
執拗に質問責めをしてきたのだろうと思うからだ。