夏・部屋・トビラ・侵入ノ母

このブログが停滞し、更新していなかった時期に、母は強制的に部屋に
進入してきた。どの時期が判明しないが夏の時期だったと思う。
外の脅迫的な力を遠ざけたかったある日の私は鍵をつけられない
扉に無理やりにつっかえ棒を設置した。
粗末なものだが外からは開かないようにしたのだ。
しかし、ちょうどうつのひどい波におそわれた母が狂ったかのように
侵入を試みた。
つっかえ棒のおかげもありなんとか第一波はやりこせたが
母の機嫌はさらに悪化した。おまけに悪い方向に勘違いさせてしまった。
つっかえ棒の設置の仕方が問題であったのだ。
部屋の扉は鍵をかけたのではなく、つっかえ棒で開かない状態であり、
開こうと力を加えると隙間はできるが力を与えないと元にもどるといった
仕掛けなのだ。だからこそ母は私が扉の取っ手を握り「応戦」していたと
思い込んでしまったのだ。この応戦していると勘違いを与えたのが間違い。
母にとっては「反抗」しているのと同義なのだ。微妙な差異が理解できない
母がさらにうつによって状況把握能力が著しく低下しているのだ。
私がなにをいっても受け入れない。
何度も扉を相手にガタガタと音をたて「一人相撲」をしている母。
母は私が扉のすぐ向こう側に居るとおもいこんでいる。
いや、母の頭のなかでは実際に私が「そこ」に居たのだ。
そう思い込ませないと後が怖い。
わめきながらもまだ扉あいてに格闘している。
私は部屋をあらされる恐怖心をいだいていたが時間がたつと
おかしさがこみ上げてきた。クスリと笑ってしまう程度の。
おかしさがおさまると次には母に対して諦観ともいうべきものが
生じた。この程度だよな、と。私自身たいした人間ではなく、
元父のギャンブル狂いをとめずに子供に負担を強いてきた母だ。
元父にしてみれば「良い伴侶」だが私にとってはまた違う評価となる。
しかたなく招き入れるかたちで扉をあけると開口一番に
「手で押さえていたでしょ」とまくし立てた。
いいえ違います。それはリンゴではありません。
英語の教科書の例文にでてきそうな文で平坦に、適切に答える。
つっかえ棒をしていただけと説明すると、母は鼻息あらく
私の手に握られている棒を睨み「それは探していたものよぉうああ」。
私の手からひったくった。どうやら母が探していたものらしいが
母は忘れている。物置小屋とも化している私の部屋にしまっておけと
言ったことを。
数日たち、あのつっかえ棒をどうなっているか気になって
調べてみると母が居るリビングの片隅に置かれているのを発見した。